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さようなら、また明日


(大切な友人との日常)

「さようなら。また明日、なのですよ。円さん」

 ふふ、と笑いながら、友人が白い手を振ってみせた。
 学校からの帰り道。T字路になったそこが、自分の住む寮と友人の自宅への分かれ道。いつもなら笑って。

「おう!また、明日な!」

 と、別れるのだけれど。
 白い手がゆるりと下りて、背を向ける友人の横顔。黒髪に縁取られたその横顔が、いつもよりも白く思えて、反射的に下ろした友人の手を掴んでいた。


「…円さん?」

 どうしました?と、穏やかな笑みで問いかけてくる。
 それは、いつもと変わらない笑顔なのだけれど。…じぃっと顔を見つめていたら、頬を染め、何かついていますでしょうか、と逆の手で頬を擦った。その問いかけには、何もついていないと首を振る。
 けれど、矢張り。

「…聖雪、顔色…悪くないか?」

 自分にはそう思える。土蜘蛛との戦いからまだ日はさほど過ぎていない。身体も精神も疲れは中々取れないだろう。けれどもその問いに、友人は一度瞳を瞬くと、安心させるように笑って応える。

「そんなことはありませんよ〜。こうみえても私、丈夫なんですから」

 ふふ、とやはり笑って友人は返すけれども。どうしても手を解くことが出来ない。無言で顔を見つめていると、やがて、友人は困ったように笑って言葉を重ねた。

「…ほら、昨日の夜は雨と雷が凄かったじゃないですか。…マンションなのですけれど、その音が響くのです。それで、少し夢見が悪くて…」

 困ったものです、と気丈に友人は笑う。
 言葉に空を見上げた。昨日に続く曇天の空は、これから晴れるか雨となるかはわからない。そのまましばし、空を見上げて。

「行く」

 ボソリと宣言した。

「…はい?」
「今日は私、聖雪の家に泊まるから」

 突然の言葉の意味をつかみかねた友人の問い返す声。それに、勝手な宣言を繰り返した。友人はきょとんとした表情を一瞬みせて、それから嬉しそうに笑って応えた。

「お泊りは大歓迎なのですよ」

========================================

 寮に寄り最小限の荷物を取ってから、友人のマンションへと移動。
 初めて訪ねたそこは、1LDKのきちんと整理された居心地の良い部屋だった。
 友人の作った食事を食べて、お風呂をいただいて…。今更に強引だった自分に気づく。

「…急に、迷惑だったか?…その、世話掛けるばっかりだし…」
 
 皿洗いと風呂洗いは強引にさせてもらったが。…ちっとも役に立たなくてごめんなさい…。夜も更けて、並べて引かれた布団の上で肩を落として謝罪する。

「いいえ?お世話するのは大好きですし。…人が一緒にいるのは嬉しいものなのですよ?」

 柔らかい笑顔で応えられれば、それだけで嬉しい。
 それから深夜まで言葉を交わした。クラス替えのこと、先日行った水族館やスライダーの話、結社での出来事…。
 互いに、もうすぐ来る戦いのことは口にせずに。まだ迷っている自分に言えることはないから。
 …それでも。

 ふと言葉が途切れた。時計を見上げれば既に短針が0時をまわっている。
 …パラパラと夜の雨の音がした。

「…雨、ですね」

 友人が小さく呟いた。休みましょう、と並んだ布団に身を横たえる。
 そろりと、手を伸ばして指を絡めた。

「…円さん?」
「…あのな、手を繋いで寝ると、悪い夢とか見ないンだぜ?」



 子供の頃は、闇が怖かった。
 その闇には得体の知れない何かが潜んでいるような気がしていた。今にして思えば、それはこの力の兆しであったのかもしれない。そこには確かに闇の生き物が息づいていたのかも。
 そんな時には、親代わりに育ててくれた人が優しく抱きしめてくれた。

「…大丈夫。円は、私が護ってあげる」

 親代わりのその人は、10才程しか年は離れていなくて。母というよりは姉という方が近かった。任侠の兄に嫁いだ彼女は、能力者ではなく、人と戦う力も持たぬ一般の人であったのだけれども。
 あの闇の深い夜に、確かに私を護ってくれたのは。
 姉の言葉と、暖かさと、想いだったと、信じている。
 


「今日の夜は、さ…」

 柔らかく笑んで、繋いだ指に力を篭めた。
 叶うようにと想いを篭めて囁く。
 
 大切で大好きな友人を、悪い夢からだって護りたいのだと
 告げたら、どんな顔をするだろうか。


| SS | 20:33 | comments(3) | - | |
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| - | 20:33 | - | - | |

だからなんでこう胸に来る文章を……ッッッ!!
最後らへんの流れが秀逸すぎて言葉がないであります!
| 鳳凰堂の中の人 | 2007/04/05 8:37 AM |
うーん。
やっぱり良い雰囲気ですね。見習いたいモノです。
ひたすらGJ! ですよ。
| 裏沢の背後 | 2007/04/05 11:21 PM |
>どんな顔を〜

壁|*'')(こっそり)こ…此方では初めまして円さん。

壁|///)←こんな顔だったと思われます

壁|//)))
素敵なSS、有難うなのです。
とってもとっても嬉しいのですよ。
私も円さんを護れるように頑張りますから、
これからも宜しくお願いします(ぺこぺこ)

壁|*><)ノシvVV←らぶを送ってみました

壁|*)))))←退場 
| 聖雪 | 2007/04/07 2:50 PM |