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切欠のカケラ


例えばそれは

大晦日の鐘を数えて迎える新年のように
待ちわびた誕生日の朝の目覚めのように
大事な試合に負けてしまった翌日のように
失恋した女の子が髪を切るように

昨日と今日で変わりたいと想う―ありふれた日常の小さな切欠



◆◆◆
12月1日早朝

屋上で冷えた空気を大きく吸い込んだ。この場所に来た目的は決まっている。
ジョブチェンジをした知り合いから話は聞いていて、手順とかに不安はない。
―…不安なのは自分の選択


目の前で傷つく人を癒せないのは嫌だった。
伸ばす手は少しでも遠くまで届いて欲しいと望んでいた。
――だからこその符術の力。

誰かを護れないのは嫌だった。
この身を盾として護りたいと望んでいた。
――だからこその魔剣の力。

与えられていた力を初めて自分の意志で違うものへ変える。
これからの選択は、私の望みを叶えられる選択だろうか。
足りぬ己の力量をわきまえず、新たな能力を望むのは間違いではないだろうか。
それでも何も試さずに、このまま立ち止まっていることなんて出来ない。

力を身に纏ったまま一歩進み、複雑な文様が薄く浮き上がる円の中心に立つ。
身体の中を光が突き抜けたような感覚と浮遊感、何かを吸い取られるような脱力感に慌てて膝に力を篭めた。

ほんの一瞬の出来事だった。

それでも何かが変わったことが自分でもわかる。
腕を伸ばし開いた掌に力を篭める。浮き上がるはずの符が形を為すことはない。
刀を抜きその上に手を翳す。そこに生まれた淡い光が刀を包みこんだ。

「―…祖霊降臨…」

とりあえず、降臨させる祖霊が蜘蛛の形をしていなくてよかったと安堵した
(そうでなければ降臨させるたびに涙目になる所だ―…)

…―最初の一歩は土蜘蛛の巫女の力。

まだ先は長いけれど。
これからの選択が己の望むものに辿り着くかもわからないけれど。
共に頑張ろうと言ってくれた後輩の手紙を思い出す。

…頑張ろうと、思えた。

◆◆◆
12月1日放課後

バイクの教習所の申し込みに行った。
駅からすこしばかり離れた家。足があれば朔や聖雪が電車を逃しても迎えに行くことも出来るだろう。バイトでも融通を利かせられるようになるに違いない。
私にも出来ることが少しだけ、増える、はず。

◆◆◆

新しい能力。日々の勉強。結社での時間。バイトと教習所。
体力には自信がある。
時間はどんどんすぎてしまうのだから、考える時間は今はなくてもいい。

◆◆◆
12月3日夜

送り主不明の宅急便が届く。
開いてみると中には色々なものが雑然と詰め込まれていた。
なんだか物凄いアオリ文句の雑誌だとか。やけに重い人型の人形とか。素朴な枕とか。
どれも生活には役にたたなそうなものばかりで…その意図がわからない。
首を捻りながら、入っていたカードの文字を読む。

「…馬鹿だなぁ…」

小さく笑って―呟く。
こんな間抜けた名を名乗る奴など考えればすぐにわかる。
傍らの自爆装置と書かれた黄色と黒のケースを開き、ボタンを押す。

『カチン』

押す為だけに作られたボタンが音を立てる。
こっそりしょげているなんて―そんな普通の女の子のようなこと。

『カチン』

私に似合うはずもない。
だから。

『カチン』

…目の前が滲むのは。
送られた物達があまりに笑えるものばかりだからに――違いない。


| 日記&SS | 11:20 | comments(0) | - | |
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